粉瘤とは?原因・症状・治療方法と「放置しても大丈夫?」を皮膚科・形成外科医が解説

「皮膚の下に丸いしこりがある」
「昔からあったしこりが、急に赤く腫れて痛くなった」
「押したら白っぽいものが出てきた」
こうした症状で受診された患者さんを診察すると、粉瘤が見つかることがあります。
粉瘤は皮膚科や形成外科では比較的よく診察する皮膚のできものです。基本的には良性ですが、そのままにしている間に少しずつ大きくなったり、ある日突然炎症を起こして赤く腫れたりすることがあります。
診察では「脂肪のかたまりですよね?」と聞かれることも多いのですが、粉瘤は脂肪腫とはまったく別のものです。
また、「痛くないから放置しても大丈夫ですか」「自分で潰してもいいですか」「薬だけで治りますか」といったご質問もよくいただきます。
この記事では、日々皮膚科・形成外科の診療や皮膚外科手術を行っている立場から、粉瘤とはどのようなものなのか、治療が必要になるケース、炎症を起こした場合の対応について分かりやすくお話しします。
粉瘤とは
粉瘤は、皮膚の内側に袋状の構造ができ、その中に角質などがたまってできる皮膚の嚢腫です。
「アテローム」「表皮嚢腫」と呼ばれることもあります。
通常であれば皮膚の表面から剥がれ落ちる角質が、皮膚の中にできた袋の中にたまっていきます。
袋の中に内容物が少しずつたまるため、最初は小さなしこりでも、時間とともに徐々に大きくなることがあります。
日本皮膚科学会でも、アテロームは皮膚の内側に袋状の構造ができ、その中に角質や皮脂がたまって生じる嚢腫と説明されています。
粉瘤は「脂肪のかたまり」ではありません
患者さんから特によく聞かれるのが、「脂肪がたまったものですか?」という質問です。
粉瘤は脂肪のかたまりではありません。
本当に脂肪細胞が増えてできる良性腫瘍は「脂肪腫」と呼ばれます。
一方、粉瘤は皮膚の中に袋ができ、その中に角質などがたまったものです。
日本皮膚科学会でも、アテロームと脂肪腫は異なるものとして明確に区別されています。
見た目や触った感触だけでは区別が難しい場合もありますので、「しこり=粉瘤」と自己判断することはおすすめしません。
粉瘤にはどのような症状がある?
炎症を起こしていない粉瘤は、痛みやかゆみがほとんどない場合があります。
そのため、
「何年も前からあったけれど気にしていなかった」
「家族に言われて初めて気づいた」
という患者さんも珍しくありません。
よくみられる特徴としては、
・皮膚の下に丸いしこりがある
・少しずつ大きくなる
・中央に黒い点のような穴が見える
・押すと白色や黄色っぽい内容物が出る
・内容物に独特のにおいがある
といったものがあります。
中央に見える黒い点は「開口部」と呼ばれるもので、粉瘤を考える手がかりのひとつになります。
ただし、すべての粉瘤で黒い点がはっきり見えるわけではありません。
粉瘤はなぜできるの?
粉瘤の多くは、毛穴の上方部分が皮膚の内側へ入り込み、袋状の構造が形成されることで生じると考えられています。
ただし、「なぜその袋ができるのか」という根本的な原因については、すべてが明らかになっているわけではありません。
日本皮膚科学会でも、ほとんどのアテロームについて袋状構造ができる原因は、いまだ明確には分かっていないとされています。
患者さんの中には、
「ちゃんと体を洗っていなかったからですか?」
「皮脂が多いからできたのでしょうか?」
と心配される方もいらっしゃいます。
しかし、粉瘤は皮膚を不潔にしていたからできるものではありません。
毎日きちんと入浴し、皮膚を清潔にしている方にもできます。
手のひらや足の裏などでは、小さな傷をきっかけに皮膚の組織が内部へ入り込み、表皮嚢腫が生じることもあります。
粉瘤はどこにできる?
粉瘤は基本的に身体のさまざまな場所にできます。
比較的よくみられるのは、
・顔
・首
・耳の後ろ
・背中
・胸
・お腹
・お尻
などです。
日本皮膚科学会でも、身体のどこにでも発生する可能性がありますが、顔、首、背中、耳の後ろなどに多いとされています。
また、頭部には「外毛根鞘性嚢腫」という、一般的な表皮嚢腫とは少し異なるタイプの嚢腫ができることもあります。
できた場所や硬さだけで自己判断せず、気になるしこりがあれば一度診察を受けていただくのが安心です。
粉瘤は放置しても大丈夫?
「粉瘤と言われたら、必ず手術しないといけませんか?」
これもよく聞かれる質問です。
粉瘤は基本的には良性ですので、小さく、痛みや炎症がなく、日常生活にも支障がない場合には、必ずしもすぐに治療しなければならないわけではありません。
日本皮膚科学会も、炎症や自覚症状がない場合には治療を行わず経過を見ることが可能としています。
一方で、粉瘤の袋自体が自然になくなるわけではありません。
中に角質がたまり続ければ徐々に大きくなることがありますし、いつ炎症を起こすかを予測することも難しいものです。
そのため、
・徐々に大きくなっている
・衣服などに当たる
・見た目が気になる
・過去に何度か腫れている
・炎症を繰り返している
という場合には、炎症のない時期に治療を検討することがあります。
粉瘤は自然に治る?
粉瘤の中身が自然に出たり、押したことで小さくなったりすることはあります。
ただし、それだけで「治った」とは限りません。
皮膚の内部に袋が残っていれば、再びその中に角質がたまり、しこりが大きくなる可能性があります。
根本的に治療するためには、袋状の構造まで取り除くことが重要です。
海外の医療情報でも、粉瘤の確実な治療は嚢腫壁を含めた完全な切除であり、袋が残ると再発する可能性があるとされています。
自分で粉瘤を潰してもいい?
自分で潰すことはおすすめしません。
「押したら中身が出たから治った」と思われる方もいらっしゃいますが、中身を出しただけでは袋が残っていることがあります。
また、強く押したり針を刺したりすると袋が破れ、皮膚の中に内容物が漏れ出して強い炎症を起こすことがあります。
炎症を起こすと周囲との癒着が強くなり、その後の手術が難しくなる場合もあります。
皮膚のしこりを無理に潰したり、自分で切ったりすることは避けてください。
粉瘤が突然赤く腫れるのはなぜ?
粉瘤で特に注意していただきたいのが炎症です。
これまで痛みのなかったしこりが、
・突然大きくなる
・赤くなる
・熱を持つ
・触ると強く痛む
といった状態になることがあります。
これは「炎症性粉瘤」や「炎症性アテローム」と呼ばれる状態です。
ここで大切なのは、「赤く腫れた=必ず細菌感染」というわけではないことです。
粉瘤の袋が破れ、中にたまっていた角質が周囲の組織へ漏れ出すことで、身体が異物として反応し、強い炎症を起こすことがあります。
そこへ細菌感染が加わり、さらに症状が悪化することもあります。
日本皮膚科学会でも、粉瘤の炎症は袋が壊れて内容物が周囲へ漏れ出すことによる異物反応が原因となり、二次的に細菌感染が加わることがあると説明されています。
赤く腫れた粉瘤は薬だけで治る?
炎症の程度によって治療は異なります。
赤みや腫れが強く、内部に膿や内容物がたまっている場合には、薬を飲むだけでは十分に改善しないことがあります。
そのような場合には皮膚を切開し、中にたまった膿や内容物を排出する処置を行うことがあります。
日本皮膚科学会も、強い痛みや腫れがあり、内部に膿がたまっている場合には切開して内容物を排出することを優先するとしています。
抗菌薬についても、炎症を起こした粉瘤すべてに必要というわけではありません。
細菌感染や周囲への炎症の広がりなどを診察したうえで、必要性を判断します。海外の医学文献でも、局所的な炎症のみで感染を示す所見がない表皮嚢腫に対し、抗菌薬を一律に使用するものではないとされています。
粉瘤の治療は手術が基本です
炎症を起こしていない粉瘤を根本的に治療する場合には、袋を含めて取り除く外科的治療が基本になります。
手術では局所麻酔を行い、皮膚を切開して粉瘤の内容物と袋を摘出します。
治療方法には通常の切除法のほか、症例によってはトレパンという円筒状の器具を用いる「くり抜き法」が選択されることもあります。
どの方法が適しているかは、
・粉瘤の大きさ
・できている場所
・炎症の有無
・過去に炎症を繰り返しているか
・周囲との癒着
・傷跡への配慮
などによって変わります。
日本皮膚科学会でも、通常の切除手術と、症例に応じたくり抜き法について説明されています。
治療方法にはそれぞれメリットと注意点がありますので、実際の状態を診察したうえで選択することが大切です。
炎症を起こす前に手術したほうがいい?
患者さんから「痛くなるまで待ってもいいですか?」と聞かれることがあります。
小さく症状のない粉瘤であれば経過を見ることもできます。
ただし、手術を希望されるのであれば、一般的には強い炎症を起こしていない時期のほうが治療を行いやすい場合があります。
炎症が強いと袋が破れやすくなり、周囲の組織との境界も分かりにくくなるためです。
医学文献でも、急性炎症がある状態では嚢腫壁が脆くなり完全切除が難しくなるため、根治的な切除は炎症が落ち着いた時期に行うことが望ましいとされています。
「いつ手術するべきか」は大きさや場所、これまでの経過、患者さんの生活状況によっても変わりますので、診察時に一緒に考えていきます。
粉瘤と間違えやすい皮膚のしこりがあります
皮膚にできたしこりが、すべて粉瘤というわけではありません。
粉瘤に似て見えるものとして、
・脂肪腫
・皮様嚢腫
・石灰化上皮腫
・おでき
・耳前瘻孔
・毛巣洞
などがあります。
日本皮膚科学会も、粉瘤に似たさまざまな皮膚腫瘍や病変について注意を呼びかけています。
そのため、私は「おそらく粉瘤だから大丈夫だろう」と見た目だけで自己判断することはおすすめしていません。
急に大きくなるしこりには注意してください
粉瘤は基本的には良性です。
一方で、皮膚にできるしこりの中には、粉瘤とは別の病気が隠れている場合があります。
また、日本皮膚科学会によると、非常に長期間存在する大きな粉瘤や炎症を繰り返している粉瘤では、ごくまれに悪性化が報告されています。特に急速に大きくなる、皮膚表面に傷や潰瘍ができるといった変化には注意が必要とされています。
次のような変化がある場合には、一度医療機関で確認してください。
・短期間で急に大きくなった
・急に硬くなった
・出血する
・表面が傷になって治らない
・何度も炎症を繰り返す
・強い痛みが続いている
・何のしこりか分からない
「粉瘤だと思っていたら違うものだった」という可能性もあるため、診断を受けることが大切です。
粉瘤は何科を受診すればいい?
粉瘤や皮膚のしこりは、皮膚科や形成外科で診察します。
特に、
・粉瘤かどうか分からない
・少しずつ大きくなっている
・赤く腫れてきた
・痛みが出てきた
・膿のようなものが出ている
・手術を検討している
・傷跡についても相談したい
といった場合には、皮膚科・形成外科へご相談ください。
皮膚のできものは、「何ができているのか」をきちんと診断するところから治療が始まります。
「小さいうちに相談していいの?」と思われている方へ
粉瘤の患者さんを診察していると、「こんな小さなしこりで受診していいのか迷っていました」と言われることがあります。
もちろん、小さな粉瘤を必ず治療しなければならないわけではありません。
ただ、炎症を起こして痛くなってから初めて受診するよりも、炎症のない状態で一度診察しておけば、「そのまま様子を見てよいのか」「手術したほうがよいのか」を落ち着いて相談できます。
私自身、診療では治療方法だけを一方的に決めるのではなく、現在の状態、今後考えられる経過、治療する場合の方法やゴールまでできるだけ分かりやすくお話しすることを大切にしています。
しこりがあるからといって、すぐに手術を受けることが決まるわけではありません。
まずは何ができているのかを確認し、そのうえで治療が必要かどうかを一緒に考えていきましょう。
さいたま市北区・日進で粉瘤や皮膚のしこりにお困りの方へ
粉瘤は身近な皮膚のできものですが、痛くないからと長く放置されることも少なくありません。
一方で、一度炎症を起こすと短期間で赤く腫れ、強い痛みが出る場合があります。
また、皮膚のしこりには粉瘤以外の病気もありますので、見た目だけで判断することはできません。
にっしん皮フ科・形成外科では、皮膚科・形成外科診療に加え、粉瘤を含む皮膚外科手術にも対応しています。患者さんの負担をできるだけ減らしながら、治療の経過やゴールについても分かりやすく説明することを大切にしています。
さいたま市北区・日進周辺で、
・皮膚にしこりがある
・粉瘤かどうか確認したい
・粉瘤が大きくなってきた
・赤く腫れて痛くなった
・粉瘤の手術について相談したい
という方は、お気軽にご相談ください。
粉瘤についてよくある質問
粉瘤は放置するとどんどん大きくなりますか?
粉瘤の袋の中には角質などがたまっていくため、時間とともに徐々に大きくなることがあります。
ただし、大きくなるスピードには個人差があります。
小さく症状がない場合には経過を見ることもできますが、大きくなってきた場合や炎症を繰り返す場合には、一度治療について相談されることをおすすめします。
粉瘤を押したら臭いものが出ました。大丈夫ですか?
粉瘤では、中央の開口部から白色から黄色っぽい内容物が出て、独特のにおいを伴うことがあります。
ただし、中身が出ても皮膚の中に袋が残っていれば再びたまる可能性があります。
強く押したことで炎症を起こすこともありますので、自分で繰り返し押し出すことは避けてください。
粉瘤に市販薬は効きますか?
市販薬で粉瘤の袋そのものをなくすことはできません。
炎症による症状が一時的に軽くなったとしても、粉瘤自体が治癒したとは限りません。
赤みや腫れ、痛みがある場合には医療機関を受診してください。
粉瘤の手術をすれば再発しませんか?
粉瘤の袋まで完全に取り除くことができれば、同じ場所から再発する可能性は低くなります。
一方、袋の一部が残った場合には再び粉瘤が形成される可能性があります。
また、一つの粉瘤を治療しても、別の場所に新しい粉瘤ができることはあります。
粉瘤はがんになりますか?
粉瘤は基本的には良性です。
非常にまれではありますが、長期間存在する大きな粉瘤や炎症を繰り返した病変で悪性化が報告されています。
急速に大きくなった、出血する、皮膚表面に傷ができて治らないなど、これまでと違う変化がある場合には早めに診察を受けてください。
執筆者
医療法人社団 日進会
にっしん皮フ科・形成外科
院長 平岩 亮一
埼玉医科大学卒業。
専門分野
・形成外科
・皮膚科
・未病医学
所属学会等
・日本形成外科学会
・日本美容外科学会
・抗加齢医学会
・コエンザイムQ10協会
研究分野
・痒み防止剤
・創傷治癒
・炎症のための生体皮膜剤
にっしん皮フ科・形成外科では、皮膚科・形成外科・皮膚外科・美容皮膚科の診療を行い、粉瘤やほくろなどの皮膚外科手術にも対応しています。
参考・エビデンス
本記事は、当院での診療経験に加え、以下の医学情報を参考に作成しています。
・公益社団法人 日本皮膚科学会「アテローム(粉瘤)皮膚科Q&A」
粉瘤の構造、原因、脂肪腫との違い、炎症性アテローム、治療方法、類似する皮膚腫瘍、悪性化について参照。
・MedlinePlus Medical Encyclopedia「Epidermoid cyst」
粉瘤の症状、診断、炎症時の症状、治療について参照。
・NCBI Bookshelf / StatPearls「Epidermal Inclusion Cyst」
嚢腫壁を含む完全切除、炎症時の治療、抗菌薬の適応などについて参照。
・DermNet「Epidermoid cyst pathology」
表皮嚢腫の発生機序や嚢腫壁破裂後の炎症反応について参照。
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